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(ああああああああああああああああああああああ……っ!)
俺の正気度を表すパラメーターは、もはや尽きかけていた。
万策尽きるまさに一歩手前そのものである。
そして瞬間、ごおんっと荒ぶる低音が大気を震わせた。
魔法の詠唱者である俺を中心に、激しい風の渦が巻き起こったのだ。
「……高位魔法……"暴風塵斬"!」
俺は、当たり前のようにその魔法の名前を紡いでいた。
台詞にエコーがかかっているかのように、それらしく唱えられた魔法だ。
魔法名もまた、当たり前のように、王道かつ鉄板の右手がうずく系のネーミングセンスである。
「暴れ狂う……暴風……っ!」
と、イフが、愕然とした様子で言った。
俺は、不可視の暴風の巨大な剣を創り出し、そして縦一閃していた。
「いっけええええええええ……っ!」
それだけである。
それだけで、あっという間に、スライムの群れのすべては薙ぎ払われていた。
俺の魔法が発動してから、ほんの数十秒の出来事だった。
後は、デエカの実を集めていた時のさきほどまでと同じ森の風景があるのみである。
スライムの群れは、一掃されていた。
戦闘などなかったかのように、葉が風にさわさわと揺れていた。
雲はゆっくりと流れていて、遠くで鳥が鳴いていた。





