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「……いくぞっ」
俺の覇気に、スライムの群れの動きがわずかに鈍った。
俺は、精神をさらに研ぎ澄ませ集中した。
すべての視界が、ナイトビジョンによる無色彩の映像のように変容した。
一瞬で、見えているものすべてが緑の単色に染めあげられた。
この緑のモノクロームの視界は、格闘ゲーム、いわゆる格ゲーでの超必殺技を使った際の演出である画面の暗転に似ている。
(……こい!)
俺は、引き寄せるべき技のコマンドを強くイメージした。
はたして、閃光が奔って、文字列が閃いた。
236236+大K。
格ゲーの超必殺技でよく使われるコマンドだ。
格ゲーには一家言ある俺にとっては親しみ深くさえある、格ゲーマーである諸兄姉ならば納得できるところだろう。
レバー入力とボタンを同時押しをすることで当該必殺技が発動する。
ある程度格ゲーに慣れ親しんでいる者であれば、コマンドを見れば指先が自然に反応してそのコマンドをなぞることができる。
電卓やキーボードのブラインドタッチと同じようなものだ。
236236+大Kというコマンドは、この戦闘で多用している6+小Kや236+大Kというコマンドよりも、複雑なものである。
236+大Kと比べても、レバーを余計に90度回転入力する必要がある。
当然必然、入力の難易度も上がるし手間と時間もかかるし、入力失敗のリスクも上がる。
(慎重……だが大胆に!)
コンパネのアーケードステックをさばくように、俺は、浮かんだ文字列に導かれるように脳内でそのコマンドをなぞっていた。





