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どんぶり勘定にしても、少なくとももう十匹以下になっていなければ、おかしい。
(なんで……)
そんな月並みな疑問の言葉が、ぐるぐると頭の中で回っていた。
戦っていたから気づかなかったのだろうか。
スライムたちの数が減っているようにはとても見えない、いや見えないどころですらないのだ、むしろ増えている。
「百匹以上……いると思います」
と、イフが、とまどいの目を俺に向けてきた。
「……だな」
俺も、同じ感想だった。
何かが、おかしい。
おかしいのはわかるのだが、何がおかしいのかがわからなかった。
イフは、不安の声をかみ殺すようにして、魔法瓶を構えていた。
足元を見ると、イフの細い白い足が震えていた。
「……」
俺は、無言で自分の足元に目を落とした。
(……俺が不安がってどうするんだ)
俺は、心中自嘲した。
包囲網をしいているスライムたちの数が減っていない、このまぎれもない事実が、俺たちに突きつけられていた。
ぼんやりとした違和感は、戦闘の途中ぐらいからあったのだ。
そして、違和感はここにきてほぼある確信へと変わった。





