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疲労の色は、隠せなかった。
俺の視界が、不意に真っ暗になった。
気づけば、俺は、跳ねあがったスライムに押しつぶされそうになっていた。
「……まずっ……」
俺は、思わず声をあげていた。
小さな駆け寄る音が、響いた。
「ええいっ」
イフが、魔法瓶のコルク栓を取った。
それから、その小柄な体全体を使ってまるでタクトを振るうように魔法瓶を振った。
ガラスの瓶からこぼれだしオーシャンブルーの液体が、宙に踊ったかと思うと、きらきらと輝いた。
「きらめけ……っ!」
イフのかけ声とともに、スローモーションのように輝きが放物線を描いた。
「……"小さな青"!」
イフが、疑似魔法の名を叫んだ。
次の瞬間には、その輝きの軌道線上に、水の塊がつくられていた。
「吹き飛べっ!」
振動音を鳴り響き、大気中で小さな泡が起こった。
イフの十分の一の調整行使版の"小さな青"である。
泡が破裂して、二匹のスライムが、大きく吹き飛んでいた。
イフの疑似魔法"小さな青"の直撃を受けたスライム二匹は、空中で霧散した。





