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「……何で、そんなに平気な面してやがる」
「おい。今のお前のやつって……」
と、チンピラAが、確認するように、チンピラBに問うと、
「……ああ。クリーンヒットしたはずだ。手応えはあった」
と、上擦った声の答えがあった。
チンピラたちの顔に、少しずつ警戒の色が、浮かんだ。
事態を見守っている人々にも、ざわめきが走っていた。
「……このやろうっ!」
再び、チンピラBが、拳をふりかぶっていた。
その瞬間、俺の視界は、緑のモノクロームに染まった。
(なん……だ……?)
俺は、おおいに当惑した。
チンピラたち、白銀の髪の女の子、青空、石畳、木の骨組みで作られた色彩豊かなはずの建物、まわりの人々、すべての要素が、ナイトビジョンによる無色彩の映像のようだった。
それも、一瞬のことで、すぐに元通りの視界になったのだが、目の前には、チンピラたちの驚愕の顔が並んでいた。
「……なっ」
チンピラCは、言葉を失っていた。
俺は、チンピラBの拳撃を、回避していたのだ。
俺自身、どうやってかわしたのか、わからなかった。
しかし、一瞬だが、緑のモノクロームの視界に、何か閃光のようなものが横切ったように思えた。
それに、緑のモノクロームの視界には、妙な既視感があった、俺は、このビジョンを知っている。





