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俺たちの路線変更したツーマンセルの攻撃は、うまく機能している。
少しずつだがしかし確実に、スライムたちの戦力を削っているのだ。
もう八割がたは、倒しているだろうか。
俺は、スライムを剣で薙いだ。
あとひと息である。
しかし、この戦闘を振り返ってみると、このぐだりようはなかなかである。
俺たちは、スライムの群れと対峙しているにもかかわらず、妙なやり取りもしていた。
イフが、俺の物真似をして軽くがっかりしてみたりもしていた。
そして、イフの体術の話が、出てきたりもしていた。
はては、俺が、妹の湊とのことを回想してみたりしていた。
そんなやり取りができるほど、俺たちに余裕があるわけでもないにもかかわらずだ。
冒険者の実力と実績は、ギルド全体で公認されている測定魔方陣"六芒星測定"によって、十九の階級に分けられる。
俺の階級はEEEで、イフの階級はFFFである。
上から数えた場合、俺は十四番目の階級で、イフは十七番目の階級ということになる。
冷静に客観的に見た場合、俺たちは文字通りのかけ出しレベルだ。
かけ出しレベルだが、スライムに対処できないほど冒険者の階級が低い俺たちではない。
そうかといって、圧勝や楽勝を飾れるほど階級が高いわけでもないのだ。
そんな俺たちが、戦闘中に珍妙なやり取りをする余裕などないはずである。
「……まるで小噺だな」
と、俺は、ため息をつくように言った。





