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「……」
イフは、黙って俺の次の言葉を待っていた。
「この戦闘の後の帰り道でまたばったりということもありえるだろう? もしもの時の保険だよ」
と、俺が、言った。
「そのために戦力は、温存しておきたいんだ」
なんだかんだでこの戦闘がなんとかなりそうだからだろう。
下馬評通りというか、俺たちの今の階級でも、スライム五十匹ぐらいならなんとかなってしまうということだ。
ただし、体の疲労も否定できないところである。
体育の授業で学校の周りを三周か四周させられた後のように、手足ががくつきはじめているのだ。
そう言えば、友人の山田が、妹の湊の体操服姿が紺色と肌色のコントラストの結晶だとか白色と肌色の清廉さの顕現だとか、わけの分からないことをのたまっていたのを思い出しかけたが、シャットアウトした。
さらに言えば、友人の山田が、妹の湊の体操服姿でネームのところが全部ひらがなのほうが断然いい絶対いいだとか、わけの分からないことをのたまっていたのも思い出しかけたが、シャットアウトである。
もっと言えば、友人の山田が、妹の湊の体操服姿でやっぱりぱっつんぱっつんしているブルマという遺物のほうが至高だとか、わけの分からないことをのたまっていたのも思い出しかけたが、とどめにシャットアウトである。
油断と安心と不安と一部無用な回想とが、俺の心中でごちゃまぜになっていた。
帰り道での新たな戦闘の可能性を考えている。
こんな状態にある時、採れる戦術は、三通りである。
突っ走るか立ち止まるか守りに入るか、この三択だ。
俺は、立ち止まるすなわち様子見を選んだ。
戦力の温存を企図したのだ。
今は、使用回数に制限のあるイフの擬似魔法の消耗はなるべく避けるほうがいいだろう。
俺の剣による攻撃で対処が可能であるなら、それを前面に押し出したほうがいい。





