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「はあああっ」
俺は、再び"入力実装"を発動した。
緑のモノクロームの世界の中、俺は、精神を集中させて引き当てたいコマンドを強く連想した。
(視えた……っ!)
はたして、次のタイミングには、俺は、雷光のように閃いたコマンド入力を完成させていた。
"入力実装"の発動と入力の精度は、この戦闘を通じて、着実に上がってきているようである。
発動と入力の加速だ。
俺のいた世界で、俺は、車を運転した経験はないが、レーシングゲームはプレイしたことがある。
お洒落なBGM、ドリフトテクニック、コース攻略、魅力を言えば枚挙に暇がないだろう。
そんなレーシングゲームでのアクセルボタンを押し込むことでどんどんギアが上がっていく感じを、俺は、思い出していた。
(この感覚を……身体に覚え込ませるっ!)
6+小K。
これは、鋭い回し蹴りだ。
俺の蹴りが、スライムに直撃した。
蹴り飛ばされたスライムが、三四度地面に打ち付けられながらがんがんと転がっていった。
やがて、どすんと重たい音が、響いた。
デエカの大木に叩きつけられた隊列の最後の一匹のスライムが、はじけて消滅したのだ。
俺は、剣に残ったゼリーをぶんっと振り払いながら、イフに向きなおった。
「偶然とはいえ、想定外の戦闘に二度も出くわしているんだよ、俺たちは」
と、俺は、イフに声をかけた。





