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「十分だ」
そう短く言った俺は、イフの前方に出た。
だいぶその数を減らしてきているとはいえ、スライムたちの包囲網そのものは、いまだ健在である。
(カゴの中の鳥はそろそろごめんだ)
俺は、心中肩をすくめた。
囲まれてはいるが、前方と後方とでは、やはり前のほうがスライムの包囲網の層が厚い。
それならば、俺が前衛に構えたほうがいろいろと対処しやすいだろう。
「俺が斬りこむから、イフは後衛で俺のフォローをしてくれ。これは、今まで通りだ」
俺の構えるエクスカリパーが、陽の光りを浴びて鈍く光った。
「はい」
イフの声音に、緊張の色が入った。
ここで、俺は、イフに一つの頼みごとをした。
「ただ、疑似魔法は、今まで以上に温存してくれ。十分の一の調整行使でいい」
「え……?」
イフが、とまどった声をあげた。
「基本は、俺が、残りのスライムを片づける」
「……」
イフは、とまどった顔で俺を見つめたままだ。
当然の反応である。
俺が言ったことは、作戦の路線変更ともとれるからだ。





