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「じゃあ、私、麦茶の炭酸割り、もらうね」
イフは、カウンターの子に目配せをした。
俺は、手の平を上に向けていた。
それから、右手の親指と中指を交差させてぱっちんとこ気味のいい音を立てた。
「ははは。それね、それな。俺も、好きなやつ。俺のも、追加して」
この店の麦茶の炭酸割りは、うまい。
俺は、四種類の麦茶をボトルキープしているほどだ。
店の中央で、わっと声があがった。
「麦茶タワー入りましたぁっ!」
ナンバー3(スリー)のラテュレという子が、元気のいい声を響かせた。
向こうの席では、麦茶タワーが作られて、盛り上がっていた。
ピラミッド状に、並々(なみなみ)と注がれた麦茶のグラスが積み上げられていた。
天井のシャンデリアの光りをきらきらと反射させた、麦茶タワーは、圧巻である。
ナンバー1(ワン)のアカリという子が、わあっありがとうっとはしゃいでいた。
きっと、アカリの客が、注文をいれたのだろう。
「ははは。向こうは、盛り上がっているじゃないか」
「ソラおじさん。よそ見しないで」
少しむくれたような表情のイフに、俺は、
「ははは。ごめんごめん。それで、何だったかな?」
と、聞いた。





