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「リリーカルナ式喧嘩術……」
と、俺は、つぶやいてみた。
実際に口にだして言葉にしてみるが、まったくイメージがわかない。
ラジカセという聞き慣れない言葉を、ネットの検索なしに想像するのと同じくらい、イメージがわいてこない。
ラジカセを知っている諸兄姉は、いかほどだろうか。
ラジカセは、若干レトロ感すら漂う、往年の機器である。
俺の自宅にも、両親の部屋の片隅にひっそりと置いてあった。
ラジカセとは、ラジオという単語とカセットテープレコーダーという単語とを組み合わせた造語である。
言葉の成り立ちを体現するがごとく、カセットテープを再生するテープレコーダーとラジオチューナーが合体した機器なのだ。
取っ手が付いていて持ち運ぶことができるし、通常の家庭用の電源だけでなく電池でも動くため、いつでもどこでも使うことができる。
また、ラジオとカセットが一体化することにより、テープレコーダーとラジオチューナーを別々に持たなくてもいいという画期的な製品だ。
カセットテープについてもネットで検索してみたのだが、話のすそ野が広がりすぎるので、省略すなわち割愛でいいだろう。
「……」
俺は、一瞬だけ瞑目してみた。
カタツムリの料理で有名なところの、春風と新緑のささやかな出会い季節の根菜を添えて、のような名前から料理の内容を想像するのと同じくらい、イメージがわいてこない。
(さっぱり……だ)
俺は、心中肩をすくめた。
長々と例えてみたが、有り体に言ってしまえば、曖昧模糊なのである。
「……すぅ……」
イフが、息を深く吸い込んだ。





