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「……はい。リリーカルナ式喧嘩術を少し……」
と、イフは、控えめな調子で言った。
語尾がごにょごにょしてしまったイフである。
「……墜とすっ!」
風が、唸った。
俺は、新手の跳躍してきたスライムを、こちらも跳躍して空中で蹴り飛ばしていた。
俺の蹴りの直撃をうけたスライムのゼリー体が、どむっと地面に深くめり込んだ。
「……わっ」
衝撃で、イフの白いワンピースの短いスカートの部分がふわりとめくれあがった。
地面の土が、大きく削り取られたようにえぐれていた。
俺は、すたんっと片膝をつきながら、着地した。
(リリーカルナ式……喧嘩術……)
俺は、心中その名を唱えてみた。
あまり自信なさげな様子からして、微妙感が半端ないようである。
映画鑑賞が趣味だと言いつつ有名な映画監督を三人だけ知っていますそれだけです的な、微妙感である。
ボーリングかじっていますガーターはまず出さないですね的な、微妙感もある。
それに、リリーカルナの名が冠された喧嘩術というネーミングである。
イフのフルネームは、イフ・リリーカルナである。
リリーカルナ式喧嘩術は、イフの姓すはわちセカンドネームであるから、リリーカルナ家に関係があるのかもしれない。
さしずめ、リリーカルナ家由来の体術といったところだろうか。





