2-16
しかし、よくわからないが、男たちは、勘違いをおこしているようで、これを利用しない手はない。
こうなった以上、出たところ勝負である。
俺は、はったりを、かけることにした。
相手を威圧するために、大げさな言動をしたり強気な態度をとったりする、要は、はったりをきかせて、相手の行動に制限をかけるのだ。
「見抜いたのは、なかなかだ」
と、俺は、声を低めて、極力迫力を演出しようとした。
静かなる威圧感というやつである。
「……く」
チンピラBは、俺の強者のオーラ(演出)に気圧されたように、半歩後ずさった。
「だが、看破したところで、どうにもならないこともある」
と、俺は、語調を強めて、言った。
俺のいた世界には、随分と昔に書かれた兵法書がある。
歴史の授業で、紹介された箇所だけは、よく覚えている。
夜の戦いでは火を多く焚いて鉦と太鼓を打ち鳴らして、昼の戦いでは旗を多く立てる。
そうすることで、敵を欺けるのだ。
確か、そんな内容だった。
このはったりによって、敵軍にこちらの軍勢を実際よりも多く見せて、おびえさせたり、攻撃をとどまらせたりすることができる。
言うなれば、はったりも、立派な戦略である。
「ここで、退けば見逃してやる」
と、俺は、冷然と言い放った。