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おそらくは、攻撃モーション中の俺への急襲である。
五匹めのスライムの体当たりが、無防備な状態の俺に、まさに突きささらんとしていた。
「……っ」
俺は、息をのんだ。
スライムのゼリー状の大きな体が、俺の視界に大きな影をつくった。
その時である。
「まかせてください、ソラっ!」
イフが、声を張りあげていた。
俺の視界の隅に、走り込むイフの姿があった。
イフは、魔法瓶のコルク栓を取った。
しゅぽんという小気味のいい音とともに、瓶の中の赤の液体が、宙に舞った。
「やああっ」
イフが、その小柄な体全体を使ってまるでタクトを振るうようにガラス瓶を振った。
三三四拍子のようなリズミカルかつ大胆で大振りな所作だ。
魔法瓶である小さなガラス瓶からこぼれだした淡い赤色の液体が、宙に踊った。
赤の液体が、線となってきらきらと輝いた。
「爆ぜよ……っ!」
イフの擬似魔法の発動の声が、響いた。
イフのかけ声とともに、スローモーションのように輝きが放物線を描いた。
「……"小さな赤"っ!」





