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スライムたちがずるずると迫りくるたびに、地面が深く沈んだ。
「……ちぃっ! やるしか……っ!」
前方から迫りくるスライムを迎撃するべく、俺は、きっと前を見すえた。
スライム五匹は、足並みを揃えて突進してきている。
その見てくれたるや、さながら運動会の二人三脚いや五人六脚のごときである。
俺は、精神を集中させた。
俺の能力"入力実装"が、発動した。
この俺の能力は、格闘ゲームすなわち格ゲー仕様の様々な技を解き放つものだ。
格闘ゲームのコマンドに近い性質をもつ、コマンドをなぞって力を振るうという能力である。
すべての視界が、ナイトビジョンによる無色彩の映像のように変容した。
空も地上も木々もイフもスライムの群れも、あっという間に緑色に染めあげられた。
緑のモノクロームの視界は、格闘ゲーム、いわゆる格ゲーでの超必殺技を使った際の演出である画面の暗転に似ている。
ゲームセンターでおなじみのビデオゲームの筐体に硬貨を投入するイメージが、頭の中のビジョンで通り抜けていった。
筐体に関しては、近くで灰皿が飛んだりしていたとかリアルファイトが起こっていたとか店員の台車が通っていたとか、様々な付属の話もあるが、ここでは割愛だ。
コンパネのイメージを、そしてアーケードスティックのイメージを、さらにボタンのイメージを、そのまま脳内で構築していく。
ボタンは、パンチ系統のものが大・中・小の三ボタン、キック系統のものが大・中・小の三ボタン、つごう合わせて六ボタンである。
閃光が奔った。
頭の中で、文字列が閃いていた。
236+大K。
回すべきスティックさばきそして押すべきボタンの組み合わせが、俺の目に焼きついた。





