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イフが至極当然な質問をしてきたので、俺は、一瞬の溜めの後、
「……何となく何かそれっぽい」
とだけ、言った。
戦術という呼びかたも嫌いではないが、戦術という呼びかたは、何となく様になるような気がしたのだ。
会う約束をアポイントメントと呼んでみたり、方法をメソッドと呼んでみたり、に通ずるものがある。
(何となく……意識高めになったような気はするな)
と、俺は、思った。
逆に言えば、それだけである。
ゆえに、改めて理由を聞かれても困るところだ。
「え……」
イフが、小さな声をあげた。
「……え?」
俺も、小さな声をあげた。
「……」「……」
二人とも数秒間黙った。
「戦術を戦術と言い直したことに、意味はないんですか?」
と、イフが、聞いてきた。
俺は、淡々とした調子で、
「おそらくないな……」
と、答えた。





