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(そんなこともあったな……)


 俺がいた世界での話である。


 今俺がいるのは、その世界から転生したこの異世界だ。


 湊の顔を見ることができるのは、学生服のポケットの中のスマートフォンの中の画像ファイルと俺自身の記憶の中だけだろう。


 湊は、綺麗な黒髪に似合う赤のリボンをよく好んで付けていた。


 ふと、渡せずじまいになったリボンのことを思い出した。


 プレゼントにと用意していたものである。


 たしか、俺の机の引き出しに入れたままのはずだ。


(俺が事故にあっていなければ、普通に渡せていたんだろうな)


 と、俺は、思った。


 もし渡せていたとしたら、湊は、どんな顔をしたのだろう。


「……」


 いつもの笑顔でありがとうと言ってくれたのだろうか。


感傷(かんしょう)……だな)


 俺は、心中頷いて気持ちを切り替えた。


 そう、今は戦闘中なのである。


 イフが、俺のほうを覗きこんで、


「どうかしましたか?」


 と、聞いた。


 回想に意識がいっていて、少しぼうっとしていたようだった。

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