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「……」
湊の勢いに、俺は押し黙ることしかできなかった。
湊の眉毛が逆ハの字に歪んだ。
「安地? ずらし弾よけ? 点数稼ぎ? 気合避け? エクステンド? 嘘避け? ……わからない……」
湊の手に握られていたコントローラーが、静かに畳に置かれた。
STGの専門用語の羅列をしながら、湊は目を潤ませていた。
「……わからない……わかんないよ!」
湊は、俺に訴えるように言った。
タイトル画面のオープニングテーマが、流れていた。
「ぜんっ……ぜん、わかんないよ……っ!」
湊の叫びが、和室に響いた。
「湊……」
湊は台風モードであり、間違いなく怒っていた。
それはきっと、俺の軽率な手前勝手なプレイが原因である。
二人三脚で相方の無謀な走りで転んでしまったようなものだ。
俺は、そこまでは理解していた。
しかしそこまでだったのだ、そこまでしか俺は辿りついていなかったのだ。
「わかん……ないよっ!」
苦しそうに、湊が、言った。
三十センチも離れていないところで、俺は湊の泣き顔を見ていた。





