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(もう……)
俺は、心中絶望していた。
(あかん……)
こうなった以上、俺は、湊の台風モード状態での暴走を止める術を持ちあわせていない。
繰り返そう、妹に敵う兄はいない、のである。
「……アウトロー、イコール、不良……ではないと思うんだが……少しアウトローなプレイも格好いいじゃないか?」
すっかりトーンダウンしている俺に、湊がずいっと顔を近づけてきた。
「格好よくなんかないよ……!」
湊が、叫んだ。
「なにちょっと悪いほうが格好いいみたいな理論? 格好よくないよ! 不良でいばってる人よりコツコツ真面目に勉強してる人のほうが全然格好いいよ!」
(……ち、近いっ……!)
熱弁する湊は、さらに俺の目の前まで顔を寄せてきた。
鼻に湊の呼気がかかって、ほのかに甘い香りがした。
湊は、気にもしていないだろうが、唇同士だって触れてしまいそうだ。
(……あれ?)
心なしか湊の瞳がうるうるしているのは、俺の気のせいだろうか。
「ま、待て……魅せプレイは、ロマンでな。ちょっと無理をしているぎりぎり感がいいんだよ。だから……」
と、俺は、言った。
「な……に……それ?」
湊のロングの髪が、湊自身の感情の揺れに同調するように、ふわっと大きく揺れて、俺の頬にかかった。





