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湊は、ぷんすかモードなどではなかったのだ。
俺は見誤っていた。
事態は、より深刻だったのだ。
ぷんすかモードの上のお手上げモード、いやさらにその上の台風モードである。
俺は、すでに暴風域に足を踏み入れてしまっていることに気づいた。
ちなみに、雨合羽もレインコートも傘も何一つ持たない状態で、暴風域に不用意に足を踏み入れたのである。
そのような空気を、俺はひしひしと感じ取っていた。
「……なんで……なんで二人で仲よくゲームオーバー画面を見なくちゃいけないの?」
湊は、つぶやくように言った。
俺は、両手をあげて手の平を湊に向けながら、
「……そ、そうだよな。悲しい事件だった……な」
「事件の元凶のお兄ちゃんが言うなしっ!」
湊の感情ゲージが、急激にぐんぐんと上昇していっているのが、よくわかった。
俺は、ぎこちない作り笑いをしながら、
「それは、俺が魅せプレイを……」
俺の言葉をかき消すように、湊は、にっこりとほほ笑んで、
「……うん、わかってる。魅せプレイは、アウトロー……。アウトローは……不良ってことだよね?」
と、言った。
俺の背中にぴりりと緊張がはしった。
その鋭さたるや、なにをどう誤ってか山椒と七味唐辛子をストレートで口の中に含んでしまったかのごときである。





