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4-212

 俺がイエスの逆の言葉を言いきることはできないようだった。


 湊は、一気にたたみかけるように、


「わかるよね? わかっちゃうよね? これもう絶対わかるやつだよね?」


 と、言った。


 そのたたみかけたるや、すさまじい(あつ)である。


(……うぐ)


 兄に(かな)う弟はいないとの名言があるが、俺は、もう一つ提言したい。


 妹に(かな)う兄などいない、である。


 うんうんと頷けた諸兄姉(しょけいし)は、ぜひプチ格言として胸にしまっていただければ、幸いである。


 あまねく世すべてに当てはまる格言とは思えないが、我が九重(ここのえ)家ではストレートに当てはまる。


 俺の目の前に、湊の顔があった。


 綺麗に整った顔である。


 つややかな黒髪に、くりっとした大きめの瞳、愛くるしい口元、身内ゆえのひいき目を差し引いたとしても、湊は美少女だ。


 クラスでも人気者らしいし、何度か告白されたりラブレターをもらったこともあるらしい。


「今、ノーって聞こえそうになったのは、私の勘違いでいいんだよね?」


 湊が、そう言った。


「……イエス」


 応える俺の声は、震えていた。


(……やばい)


 と、俺は、思った。

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