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長年の経験が、俺にある事実を教えていた。
我が妹、湊はぷんすかモードである。
控えめに言っても、ご機嫌斜めである。
「あー、あのだな、湊……?」
と、俺は、おずおずと挙手しながら、おうかがいを立ててみた。
「あのね、お兄ちゃん?」
と、湊が、ゆっくりと言った。
湊のまっすぐな視線から、すすすっと視線をそらした俺である。
「イエスかノーで答えてね?」
「……イエス」
俺は、そう答えるしかなかった。
「今、私たちが見ているのはゲームオーバー画面だよね? あ、今、タイトル画面に戻ったよ?」
「……イエス」
「私が、このゲームのクリアをものすごく楽しみにしていたの知っていたよね?」
「……イエス」
湊が、上目づかいに俺のほうを覗きこんできた。
「……一緒に頑張ってエンディング見ようって、約束したよね?」
「……イエス」
「今、私が泣きそうな気持ちなのはわかるよね?」
と、湊は、言った。





