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「大丈夫かよ。衝突事故で、こりゃあ、骨にひびが入ったかもしれねえな」
チンピラBが、にやつきながら、言った。
女の子と男たちが、ぶつかったことによる騒動のようである。
チンピラCは、女の子に向かって、
「治療代を出してもらわねえとな」
と、言った。
立ったままぴんぴんとしている男たちは、倒れ込んでいる少女のことを心配している様子など、微塵もなかった。
「お嬢ちゃんが、そんなにいっぱい荷物を一生懸命に運んでいて、ふらついているのが、悪いんだぜ」
「そうそう、つられて、俺たちも、ふらっとして、ぶつかっちまったわけよ」
チンピラたちの物言いは、言いがかりそのものだ。
ここまで、露骨だと、事態は、明々白々である。
(こいつら……)
チンピラたちは、当たり屋だろう、故意にぶつかって、治療費を請求しているようだ。
(何で、誰も何も言わないんだよ)
俺は、歯がゆくなって、辺りを見回した。
みんな、一様に、不安げな顔をしている。
きっと、誰もが、この光景を心配して、何とかしたいとかしなければと思っているはずだ、俺は、そう思いたい。
この表情を、知っている。
傍観者の顔だ。
見てみぬふり、当事者にならず、ただ見ているだけ、場合によっては、責任の意識がないだけ加害者よりたちが悪い。





