2-11
人垣をかきわけると、その中心には、三人の男たちと一人の少女がいた。
少女のほうは、小柄で俺よりも年下のように見えて、雰囲気的に女の子と言ったほうがしっくりくる。
白銀の少し長めのボブカットの髪型が、目をひいた。
一方の男たちは、見るからにガラが悪そうで、年齢は俺よりも少し上だろうか。
独断や偏見がよくなりことは、重々わかっている。
しかし、一見するからに、タチの悪いチンピラ三人が、いたいけな女の子を囲っているようにしか見えなかった。
「……かわいそうに」
と、俺の横の女性が、気の毒そうに、言った。
「めちゃくちゃにされちまうぞ」
と、別の中年の男性が、沈痛な面持ちで、言った。
「……」
俺は、少女を見やった。
女の子は、屈みこんだままで、籐で編んだと思われるバスケットが、石畳に転がっていた。
膝を擦りむいた女の子を、チンピラたちは、にやにやしながら、見下ろしていた。
バスケットの中身だろうか、青々とした草や花々が、打ち捨てられたように、散らばっていた。
(ひどいな)
と、俺は、思った。
「あーあ、痛ぇな、おい」
と、便宜上以下のように呼称するが、チンピラAが、たいして痛くもなさそうに、言った。
女の子は、俯いたまま、声を発しなかった。





