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包丁と彫刻刀をして、そのような有様の俺である。
包丁と彫刻刀をしてかくありたる、しかして剣をしていかがたるや、である。
そんな俺が、剣を振るうことなどできるのだろうか。
そんな気の迷いというか不安が、ふらっと頭の隅をかすめていった。
(……っ)
ハンバーガーセットを注文した直後に、チーズバーガーセットのほうがよかったのではないかと迷いがよぎるような感覚だ。
ポテトのサイズを通常のサイズからラージサイズに変更すべきかどうか迷う感覚でもある。
(……いや)
俺は、自身のそんな思考に上書きするように、
(できるかできないかじゃない……やるかやらないか、だ!)
と、思った。
俺は、剣の重さを感じながら、両手でしっかりと握りしめた。
エクスカリパーの柄が、じんわりと汗にぬれた。
刹那、刃に、俺の顔と青空と雲と森が映りこんでいた。
渾身の力を込めて、俺は、剣を振りかぶった。
ただまっすぐに振り下ろす、そういう剣一閃だ。
風切り音が、生じた。
はたして、三匹目のスライムは、一刀両断されていた。
文字どおりの真っ二つである。
二つに分かたれたスライムCは、霧散した。





