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「ええと……俺の聞き間違えじゃなければ」
と、俺は、前置きしてから、
「今、君は、女神だと言ったように、聞こえたんだけれども……」
と、エストと名乗った少女に、言った。
俺は、現実味のない話だとは思いながらも、言い淀んでしまった。
あまりにもエストと名乗る少女が淀みなく自然なニュアンスで自身のことを女神だと言うものだから、俺自身、半信半疑の枠に片足を突っ込んでいたからだった。
エストは、細く雪のように白い両手を礼儀正しく合わせたまま、はにかんで、
「はい。そのように、申しました」
俺の頭の中の思考回路は、ショートしかけていた。
「いやいや! 女神なんて、いるわけないでしょ」
と、俺は、やり場のないツッコミを抱えたまま、少し声を高くして言った。
女神様なんて、神話か漫画かはたまたゲームの中でしか見聞きしないものだろう。
エストは、ほほ笑んだまま、
「ここにいるじゃないですか」
と、さらっと言った。
青空の中に放り出されているこの状況、謎の青空の空間だけでもお腹いっぱいなのに、目の前の少女は、そんな俺に追い打ちをかけるように突拍子もないことを言っている。
情けないことだが、もともとプレッシャーや突然のイレギュラーな出来事やアクシデントには強くはない。
しかし、俺ではなくても、こんな場面に出くわしてしまったら、誰だって困惑すると思う。
(でも……)
自分でも不思議だったのだが、五分もすると、俺は落ち着きはじめていた。