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俺は、小さな風をぐっと踏んで、
「いくぞっ!」
と、叫んだ。
足下にトランポリンをとてつもなく強化したような反動を感じた。
次の瞬間、エレベーターで急上昇するようなふわふわした無重力感に包まれた。
まったくして一瞬の出来事である。
俺は、足下に巻き起こった風を踏み台にして、俺は、高々と跳躍していた。
跳躍というか、少し調子に乗って言えば、滞空時間が長いプチ飛翔である。
狙いどおりだと、俺は、思っていた。
この移動技は、今までは地上での移動で使用していた。
言わば水平の高速移動である。
そして、その移動は、風の勢いを利用しているものだ。
そうであるならば、同じように風の勢いを利用して、言わば垂直の高速移動にも使えるのではないだろうか、そのように考えたのだ。
横から縦へという、思いつきにも似た発想の転換だったが、結果オーライと言えよう。
あっという間に、デエカの木のてっぺんを越えるぐらいまで、俺は、飛んでいた。
「……す、すごいっ」
驚愕するイフの声が、下のほうから小さく聞こえた。
完全にスライムたちの上を取った形だ。
地上戦では相手の裏を空中戦では相手の上をとは、数々のゲームでも共通して成り立つ鉄板の戦術の一つである。
どちらも相手の反撃を受けにくく、うまくいけば一方的な攻撃も可能だからだ。





