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2-9

「それで、こいつが、そのエクスカリパーだ。ほら、かっこういいだろう。見てくれは最高だし、武器としての性能もいいぜ。スライムなら、三体倒すまでなら、刃こぼれ一切なし!」


 見れくれは、いかつい装飾がこれでもかと施されていて、オラオラ系やB系のテイストも入っている。


 加えて、スライムといえば、最低レベルのモンスターだろうが、それを三体倒しただけで、刃こぼれするのは、武器として、いかがなものなのだろうか。


「あまりの雄々しさに、声も出ないか。このエクスカリパーに、惚れたか?まあ、仕方のないことだ。銀月亭の親父の知り合いだから、特別価格の50000ネカで、いいぜ」


 50000ネカ……50000円の聖剣レプリカ……不安になってくる値段設定である。


「ああ、そうか、お前さん的には、こっちのほうがいいか。『神々の黄昏(たそがれ)ラグナロクのパチもの、ラクナロック!10000ネカで、大放出中』」


(もう、堂々とパチもの宣言している。偽物(にせもの)を前面に押し出しているぞ、この人……)


「ちなみに、ポイントカードでポイントを30個集めていれば、両方セットで500ネカだ」


 もはや、むちゃくちゃだし、この武器屋の親父の渋さは、声と顔だけのようだ。


「とにかく、このエクスカリパー十本を、そこの入り口のところまで、運んでもらえるか?」


 と、武器屋の親父が、言った。


 郷に入りては郷に従え、とりあえずこなしてみようと、俺は、思った。


「わかりました……って、(おも)っ!」


 想像以上の重さで、びくともしなかったし、まずいことに、中途半端に担ぎ上げた聖剣レプリカの一振りを、派手に落としてしまったのである。


「お前、クビな」




 以上が、クビになるまでの経緯である。


 武器屋の親父は、頭をかきながら、


「悪いな、ぼうず。うちは、力仕事メインだから、このぐらいは軽く持ってもらえないと、厳しい。気ぃ落とすなよ」


「……いえ」


 武器屋のおやじが言うことは、もっともで、正直に、不採用利用を言ってくれるだけでも、ありがたかった。

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