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「でも、俺は……っ!」
(……)
以上は、俺のいた世界で放映されていた夜の九時からの人気トレンディードラマのワンシーンである。
サックスとピアノが主旋律を担う、恋の物語が不意に始まってしまいそうな切なげなメロディーラインのオープニングテーマが、印象深かった。
カラオケでも不動の人気を誇る名曲だ。
ただし、男性歌手の歌にかかわらずキーがとても高く、俺の場合、キーをマイナス5ぐらいしないと歌えなかった。
そのようなドラマのワンシーンを思い出すようなイフのかたくなな態度だった。
(止めないでくれって……)
俺は、まだ脳内で流れている切なげなオープニングテーマに目を細めた。
意固地になっているのかと思われるほどに、はっきりとしたイフの拒絶の言葉だった。
「大丈夫です。私にだって……できるんです!」
思いつめたようなイフの目に、俺は、とまどった。
俺は、イフの有無を言わせぬ迫力に圧されて、
(何だ、この覚悟をきめたような感じは……?)
と、思った。
「それを、証明してみせます!」
イフは、そう言い放った。
「待て。いくな……っ!」
俺は、イフをぐいっと引きとめていた。
(まだ、イフとは何もはじまってもいないんだ……!)





