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「いきなり? いきなりってなんですか?」
失望色の失笑に、俺は、黙るしかなかった。
「……」
「いきなりなんかじゃないです。私は、言わなかっただけです。そして、あなたがそれに気づかなかっただけです」
「……」
「あなたはずっと気づかなかったし、今も気づいていない」
氷のような声だ。
「止めないでって言ったんです。べつに理由を言わなければいけないことはないでしょう?」
返事は、とても冷たかった。
「……そんな一方的に言われて、納得できるわけがないだろう」
とまどいと寂しさと怒りをごちゃ混ぜにした俺の声は、自分で聞いていても、小さく頼りなかった。
正直な俺の気持ちだった。
相手は覚悟を決めて切り出している。
対して俺はと言えば、寝耳に水の状態なのだ。
せめて、理由ぐらいは聞かせてほしかった。
(……そうだ。わかっている)
理由を聞いたところで、おそらく納得などできないだろう。
俺だって、そんなことはわかった上で聞いているのだ。
「納得なんて、それは、あなたの問題でしょう? 私には、関係ない」
それでも、返事は、切り口上のままだった。





