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俺たちは、すでにスライムの群れに取り囲まれてしまっている形だ。
こうなった以上、まったくスライムたちと衝突もせずにやり過ごすことは難しいように思えた。
スライムたちは、ゆっくりとだが確実にこちらに近付いてきていた。
スライムの前進に合わせて、デエカの落ち葉が、がさっがさっと音を立てた。
俺は、近くの地面に置いていた剣を鞘ごと手に取った。
ヴィセントの街の武器屋のおやじから譲り受けた聖剣エクスカリパーである。
すらりと剣を抜くと、エクスカリパーの刃が鈍い銀色の光りを放った。
緊張しているからだろう、妙に剣の重さが気にかかった。
(二度目の戦闘、か……)
と、俺は、思った。
モンスターとの戦闘は、草原での戦闘以来の二回目だ。
RPGの世界では、最初の何十回かの戦闘は、経験値稼ぎのイベントのようなものだ。
雑魚モンスターとの戦闘をばしばしこなしていって、ゲームのシステムや世界観への理解を深めるのである。
緊張も何もあったものではない、単なる消化試合だ。
だが、これは決してゲームなどではない。
怪我をすれば痛いし、怪我ではすまないこともあるかもしれない。
(……真剣勝負か)
俺は、深呼吸した。
自身の腹から胸に空気が流れていくのが、わかった。
剣の柄を握る手に、じんわりと汗を感じた。





