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二人とも無言ではあるのだが、その意味合いたるや、まったくの別物だ。
外見上は同じに見える赤ワインが、かたや五年ものでかたや十年ものというような、別物ぶりである。
「……はぁ」「……ぅ」
言うなれば、攻めの無言と防御の無言である。
言わずと知れているだろうが、前者はイフであり、後者は俺である。
胸もとにぐいっと拳銃を押しつけられているような、ひっ迫感が俺を襲っていた。
「……ソラ」
俺の名を呼ぶその声は、冷たかった。
銃口をぐりぐりと押しつけられていているような圧すら感じた。
妹の湊の、女の子は怒らせると怖いんだよという言葉を思い出していた。
「……見ました……よね?」
と、イフが、静かに言った。
(……む?)
プレッシャーにさいなまれながらも、俺は、違和感を覚えた。
攻め手のイフの言葉に、若干の言いよどみ感を感じたのは、俺の気のせいだろうか。
加えて、イフの言っている意味が理解できないものだから、俺は、
「……何のことだ?」
と、聞いた。
「……」「……」
ここで、二人とも黙ってしまった。





