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「このやり取りは、あまり意味がないんじゃないか? 文字は見えないからな」
と、俺は、肩をすくめて言った。
「意味がないものなんて、この世の中にないんですよ?」
イフが、俺に向かって諭すように言った。
「……そんな名言ふうに言われてもな……四つの言葉のうちどれを言っているのか、伝わらないだろう?」
「……じゃあ、文字が見える小説とかだったらいいんですかね?」
と、イフが、ぽつりと言った。
思いきりぶん投げの話の方向転換である。
ハンマー投げであさっての方向に投げっぱなすぐらいの勢いだ。
「……思いつきで言っていないか?」
と、俺が、聞いた。
「ひらめきと言ってください」
「……俺たちの会話は、小説じゃないよね?」
「じゃあもう、私たちは小説上の存在でいいんじゃないでしょうか?」
投げやりな調子のイフである。
「俺たちは、小説の中にいるわけじゃないぞ」
と、俺は、言った。
「そうでしょうか。あんがい、私たちは、とある小説の登場人物だったりするんじゃないですか?」
「ええっ……?」
俺は、おおいにとまどった。





