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「選んでください」
イフが、宣告するように言った。
「へんたいさんですか? ヘンタイさんですか? 変態さんですか? HENTAIさんですか?」
「……俺には、同じ言葉を四回連呼されているようにしか聞こえないぞ?」
無慈悲な四択だ。
選択肢があるように見えて選択肢はない、まさに悪魔の選択肢である。
「……できれば、へんたいさん……がいいかな?」
俺は、こそっと言った。
どれを採ったところで地獄だ、ならば一番表現がやんわりしたものを選びたいと言うのが人情というものではないだろうか。
イフは、ジト目で、
「わかりました。HENTAIさんですね」
と、言った。
「……俺が選んだのとイフが言っているのって、何か違うような気がする……」
「ごめんなさい。じゃあ、ヘンタイさんでしょうか?」
イフは、悪びれた様子も見せず、言った。
「もしかして、へんたいさんという言葉を言いたいだけなんじゃ……」
「そんなことはありますよ」
「……」「……」
微妙な間が、流れた。
イフは、どんよりとうつむいたままだ。





