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「……ん……しょ」
「どうだ、いけそうか?」
イフを肩車した俺が、少し顔をあげて聞いた。
うんしょっとかよいしょっという声が、俺の頭頂部でしていた。
「もうちょっと……なんですが……」
金色に輝くデエカの実すなわちハイパー・プレミア・マックス・レア・ゴールデン・チアフル・ボリノア・スペシャル・デエカ・フルーツに、イフは手を伸ばしているのだが、あと一歩のところで届いていないのだ。
楽に届くという俺の下馬評は、残念ながら外れていたようだった。
しかし、届かない距離でもないだろう。
「俺が、もう少し高さを稼ごう」
俺は、バランスに気をつけながらつま先立ちをした。
「もうちょっとで届き……そうです」
「りょう……かい」
俺は、さらに少し背伸びをした。
つま先立ちをしているものだから、ふくらはぎがぷるぷると震えていた。
油断していると、ふくらぎがつってしまいそうである。
(運動不足だな、これは)
と、俺は、内心自省した。
そうこうしていると、やがて、
「……とっ。あ、採れましたっ!」
イフの嬉しそうな声があがった。





