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「ほら、いいぞ」
俺は、自身の背中を見せながらイフを促した。
「……え?」
「するんだろう、肩車。早く乗れよ」
と、俺は、言った。
「……何かいつもよりも行動が、素早いです」
と、イフが少し堅い声で言った。
「そうか?」
と、俺は、聞いた。
俺はすぐやる課を自認している。
やると決めたのならそこからの行動はそこそこ素早いのだ。
「……いやらしいことしないでくださいね?」
と、イフが少し警戒した声で言った。
「しないわっ!」
たかが肩車である。
どうしていやらしい要素など発生しようかいや発生するはずもない。
反語で主張できるほどに明白な事実である。
反語は、修辞法のひとつである。
なになにであろうかいやなになにでないという言い回しが有名だ。
俺のいた世界でも、古文や漢文の時代から現代に至るまで使われている実に伝統的すなわちトラディショナルな用法である。





