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色彩豊かなデエカの紅葉にしばらく目を奪われていたが、
「ソラ」
と、声をかけられて、俺は我に返った。
「では、実を採っていきましょう」
イフは、ガッツポーズをとって、早速にやる気まんまんといった感じだ。
イフのサイドテールが、ぴょんっと上下に揺れた。
「がんばりますっ」
と、イフが、はきはきと言った。
(おおっ)
俺は、イフのやる気まんまんオーラに内心声をあげていた。
まんまんオーラは、目に視える形でイフの細い脚を中心に円状に渦巻いているかと、錯覚するほどだ。
(間違いない。これは……っ)
夏休みの宿題をドリルから自由研究まですべからく最初の一週間で片付けてしまおう、そんなアグレッシブささえ感じ取れるまんまんさである。
ちなみに、俺は、夏休みの宿題はいつもぎりぎりだった。
計算ドリルはページ数の多さに辟易し、漢字ドリルは同じ漢字を何度も書いて練習する行程がなかなかにタイトに感じた。
自由研究は、アサガオの観察と雲の観察など、鉄板ネタで何とかしのいでいた覚えがある。
夏休み日誌にいたっては、一週間分くらいまとめて書いていたような気がする。
直近一週間の天気ややったことなど覚えているはずもなく、晴れ特にやることはなかった雨特にやることはなかったというような記述をよく多用していた。
さぼり癖のあるいやごくごく普通の真面目さと適当さを持っている諸兄姉ならば、俺のこの体たらくぶりは、理解に難くないのではないだろうか。
夏休みあるあるである。





