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俺は、一呼吸おいてから、
「ちゃかしてしまったけれど……やっぱりイフはすごいよ」
と、言った。
「あ……」
イフの小さな声があがった。
薄暗い森の中、俺たちの携行ランプの灯りが、ふっとその場で止まった。
俺は、左斜め後ろに、イフの静かな視線を感じた。
イフは、俺の次の言葉を待っているようだった。
錬金術についてあまり知りもしないのに感心するのは失礼にあたる行為だというのは、わかっている。
それは、根拠のない上から目線の言葉になってしまうからだ。
ただ、俺は、イフの錬金術師としての技量についてのみそう思っているわけではない。
その努力に対してそう思っているのだ。
努力できるというのはそれだけで才能だ、俺の持論である。
イフぐらいの年の時、俺は、学校の連中とバカをやっていた時期だろう。
適度に勉強して適度にスポーツをしてたまには羽目をはずしたり思いきったことをしてみたり、いろいろだ。
月並みな武勇伝だってある。
もちろん、それはそれで意味のあったことだし楽しかったし充実していたし、それを否定するわけでもない。
ただ、何かに対して一生懸命打ち込めていたかと言うと、その答えはすぐには出てこないのだ。
「……何で俺なんだ?」
俺は、自然と聞いていた。





