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「……お、おう……」
冷静に思い返してみれば、山田との会話において、俺の返事もおうとか何とか一種類だけなのは、驚きである。
そして、購入したはいいものの、たいしてプレイもしないで部屋に美少女ゲームのやたらと大きめの箱を山積みにしていた。
プレイする時間がないという山田の主張はもっともだったが、プレイする余裕がないほどに買い込むのが問題ではないのかと聞いたのだが、
「ばっかやろう! 信者が推しのゲームを買うことのサガは教えただろう!」
「……お、おう……」
「そこに山があれば登るし、そこに海があれば泳ぐし、そこに道があれば歩くんだよ! だったら! そこに○○タソのパーケージがあれば、これはもう買うしかないだろっ?」
「……お、おう……」
その山積みの状態は積みゲーといって、美少女ゲーマーにとっては、ある意味、勲章のようなものらしかった。
おしゃれなやつが色々な服をストックしているのと同じだと、山田は主張していたものだ。
山田は、アニメにも詳しかった。
深夜帯の美少女ゲーム原作のアニメについては特に詳しくて、よく教室で熱弁をふるっていた。
美少女ゲームが原作のアニメがあったと仮定しよう。
原作通りの声優を起用した、原作ファンにとってはありがたい、キャスティング。
作画崩壊をしない、原作絵のイメージを忠実に再現する、安定した作画スタッフ。
物語を盛り上げる、こだわりの音響にBGM。
丁寧な脚本づくり。
そんな素晴らしい一クール全十二話のアニメ作品である。
「もうこれは爆売れだよな!」
「……お、おう……」





