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武器屋の親父と話したおかげで、セドリグ・ノーハンのことやノーハン商会のこともよくわかったし、イフやリリーカルナ商会のこともよくわかった。
だがしかしである。
俺と武器屋の親父のやり取りが、長らく続いたわけである。
言ってみれば、野郎同士の淡々(たんたん)とした会話である。
これが、ゲームやアニメであれば、未曾有のイレギュラーな事態ではないだろうか。
もう少し具体的に示してみる。
俺がいた世界での友人に、山田というやつがいた。
定期テストでは必ず学年で十位以内という秀才だ。
フルネームは、山田山根、比較的覚えやすい名前である。
「○○たそ、萌え~」
「○○は、俺の嫁」
山田の言葉で一番よく聞いたフレーズである。
○○の部分には、女の子の名前すなはち山田がプレイしていた美少女ゲームのヒロインの名前が入るのだが、二・三ヶ月ごとに変わっていた。
そんなにころころと○○の部分が変わるのは移り気が過ぎるのではないかと聞いたことがある。
返ってきた答えは、変わるのは美少女ゲーマーの宿命だということだった。
「お前に、○○タンから○○たそに嫁を変えなきゃいけない苦しみがわかるのかっ?」
「……お、おう……」
「推しのヒロインを一人も挙げられないお前は、もうその時点で終わってんだよ!」
「……お、おう……」
そんな会話をしたのを覚えている。





