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「……キレ芸が……私の持ちネタですから」
寒さで思考回路が麻痺していまったのだろうか、イフがわけのわからないことを言っていた。
「……えええっ? キレ芸……! そんなキャラじゃないよねっ?」
俺が知る限りにおいては、イフは生真面目な性分で、キレ芸とはほど遠い。
「マッチも薪もかがり火も持っていないソラには、失望しました」
イフは、宣告するように言った。
「失望されてもねえっ!」
俺は、あらがうように返した。
「じゃあ絶望しました」
「もっと悪いわっ!」
「ソラが頼りにならないのなら……」
イフ葉、覚悟を決めたように思いきった調子で言った。
「持っているローソクを使います」
「持ってるんかいっ。はじめから使ってねっ?」
「でも、ローソクに火をつけるマッチを持っていませんでした」
「堂々巡りかいっ!」
俺は、叫んでいた。
「寒っ……」「さむっ……」
おわかりいただけたろうか、これが不用意なダジャレが呼び起こす、極寒絵図なのだ。
二人して再び縮こまってしまった。





