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4-82

「……キレ芸が……私の持ちネタですから」


 寒さで思考回路が麻痺していまったのだろうか、イフがわけのわからないことを言っていた。


「……えええっ? キレ芸……! そんなキャラじゃないよねっ?」


 俺が知る限りにおいては、イフは生真面目な性分(しょうぶん)で、キレ芸とはほど遠い。


「マッチも薪もかがり火も持っていないソラには、失望しました」


 イフは、宣告するように言った。


「失望されてもねえっ!」


 俺は、あらがうように返した。


「じゃあ絶望しました」


「もっと悪いわっ!」


「ソラが頼りにならないのなら……」


 イフ葉、覚悟を決めたように思いきった調子で言った。


「持っているローソクを使います」


「持ってるんかいっ。はじめから使ってねっ?」


「でも、ローソクに火をつけるマッチを持っていませんでした」


「堂々巡りかいっ!」


 俺は、叫んでいた。


(さむ)っ……」「さむっ……」


 おわかりいただけたろうか、これが不用意なダジャレが呼び起こす、極寒絵図(ごっかんえず)なのだ。


 二人して再び縮こまってしまった。

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