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俺は、この異世界のことをまだまだ知らない。
未知であふれている状態である。
仮にこの異世界を地理のテストに例えるならば、今の俺に解答できるのは、ヴィセントの街に関する基本問題のみといったところだろう。
(宿屋の銀月亭、大通りの武器屋、露天商の八百屋、冒険者ギルド……)
指でおりおり、自身の知識を確かめてみる。
(……当たり前だが、圧倒的知識不足だな)
と、俺は、思った。
この異世界に来てから四日目なのだから、当然と言えば当然である。
異世界地理テストは、よくて10点いくかいかないかかもしれない。
赤点と補習コースまっしぐらのヤバさっぷりかつヤバみである。
テストの問題で未学習の部分が出てきた時は、まずは冷静に問題全体を見回すことが重要だ。
問題用紙を俯瞰するのだ、問題全体を眺めると言いかえてもいい。
問題用紙を最初から最後まで斜め読みする。
自分にできそうな問題とできなさそうな問題によりわける。
その上で対処していけばいいのだ。
未学習でまずは触れるべきは、ヴィセントから比較的近いというトライデントの街と王都ヨルムレイだ。
トライデントには、ノーハン商会の本部があるという。
ノーハン商会の幹部セドリグ・ノーハンとの因縁がある以上、そう遠くない未来に訪れることになりそうである。
ヨルムレイについては、王都と呼ばれるのだから、国を治める王がいるだろうし王城もありそうだ。
クエストをこなして冒険者ギルドに通うなかで、トライデントや王都ヨルムレイについても、おいおいわかってくるだろう。





