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「呼び捨て……なんですね」
と、イフが、言った。
「そう言えばそうだな」
イフの背後に黒いオーラが見えた気がするが、気のせいだろうか。
ごごごごごといかいう静かな効果音がつきそうな勢いだ。
ただ、イフの目つきがよりきつくなったのは、気のせいではなさそうである。
「……ソラのことは、パーティーのパートナーである私がしっかり監視していないと駄目なことがよくわかりました」
「おい。何を言ってるんだ……?」
「何でもありません」
と、イフが言って、俺にクエスト申請完了の書類を広げてみせた。
「行きますよ」
イフの有無を言わさないような声と同時に、俺は左手にほのかな温かさを感じた。
イフの小さな手に握られていたからだった。
「クエスト開始です、ソラ」
と、イフが、言った。
「ああ、了解だ」
俺は、頷いた。
俺たちは、冒険者ギルドを後にした。
状況開始もといクエスト開始である。
向かうは、ここヴィセントの街から街道に沿って北北東の方角、ネムリアの森だ。





