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なぜだろうか、ここにきて、微妙に流れている空気が変わったような塩梅である。
場の気配の変化、そう言いかえてもいい。
麻雀で言えば、誰もが流局前提で流している中、突如誰かがリーチをかけてきそうな空気が出てきたような感じだ。
もっと言えば、謎の電流が走って圧倒的展開で国士無双でも出てきかねない、そんな場の流れの変化である。
(何だ……?)
俺は、少しとまどった。
「……見とれたり、気になったりしてくれたんですか?」
と、マーシャルは、念を押すように言った。
「はい。その通りです」
と、俺は、あっさりと答えた。
マーシャルの眼鏡に目がいっていたのは、事実だ。
俺の視界の隅で、白銀の髪のサイドテールがぴょこぴょこ揺れていた。
「……~っ」
もちろんサイドテールの主は、イフである。
なぜだか不明だが普段の冷静沈着さをじゃっかん保てなくなっているイフとは対照的に、マーシャルはハーフアップの髪を揺らしてほほ笑んだ。
「ふふっ。本当にそうなら、そんなこと言わないですよ」
「何の話ですか?」
俺は、わけがわからずそう聞いた。
マーシャルは、白い細い中指で俺の胸元をそっと小突いた。
「女の子の前なんですから、きっちりかっこつけてくださいよ?」





