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「どうかしましたか?」
「……え?」
マーシャルに聞かれて、俺は、我に返った。
「私の顔に何か付いていましたか?」
「それは、ほんの数分前の俺の台詞ですよ?」
「あえて言ってみました」
マーシャルは、舌を出して笑ったが、すぐに思いついたようにぱんと両手を合わせて、
「もしかして、私に見とれちゃいましたか?」
と、試すように聞いた。
「はい。見とれていました」
と、俺は、さらっと言った。
眼鏡を外した時のマーシャルがどんな感じだろうかと考えていたのは、事実である。
事実は事実だから、ここはごまかしてもしかたがない。
「私のことが気になったんですか?」
と、マーシャルが、確認するように言った。
「はい。気になりました」
と、俺は、さらりと言った。
眼鏡を外した時のマーシャルがどんな感じだろうかと考えていたのは事実だが、眼鏡を外したらということを考えている時点で俺自身の趣向としては眼鏡属性ではないのだろうなと認識していたのは、事実である。
「……」
マーシャルが、ふいに沈黙していた。





