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冒険者ギルドのマーシャルは、フレームなしの眼鏡がよく似合っている知的な感じの女性である。
「マーシャルさん。おはようございます」
俺たちが挨拶すると、マーシャルもにっこりと笑って、
「おはようございます」
マーシャルは、俺のほうを見てにんまりと恍惚の表情を浮かべていた、美人な容貌にはあまり似あわない表情だ。
「……俺の顔に何か付いていますか?」
と、俺は、少し不安を覚えて聞いた。
「そんなベタなことを言わないでください。何も付いてなんかいませんよ」
「はあ……」
俺は、生返事をした。
「それ、のことですよ」
「それ、ですか?」
マーシャルは、ひそっと声を小さくして、
「やっぱりいいですね」
と、耳打ちするように言った。
「何のことですか?」
と、俺は、聞いた。
「いやだなあ。あなたの服……見たこともない装飾そして刺繍された紋章……そう、聖騎士が装備していたという伝説の防具、"紫紋の聖服"のことですよ」
"紫紋の聖服"、やはりとんでもなく中二心をくすぐるニュアンスの名前である。
実体は、俺のいた世界の何の変哲もない普通の学校の制服である。





