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「無理ゲーだな」
と、俺は、明言した。
頭を撫でるという行為すなわちぽむぽむをそんなにベストタイミングで発動できるほど、俺は空気を読める自信はなかった。
できないことはできないと言ったほうがいいし、難しいことは難しいと言ったほうがいい。
虚勢をはるのは、自己満足であって、相手に迷惑をかけるだけだからだ。
「ムリゲー? どういう意味ですか?」
と、イフが、聞いてきた。
「たいした意味じゃない。でも、努力はするよ」
と、俺は、肩をすくめた。
「……」「……」
俺とイフの視線が交錯すること、数秒である。
「……もういいです。ソラのそういうところにも、だいぶ慣れてきましたから。それに、ソラの誠意も何となく伝わりました」
イフは、ため息をついた。
険のある声音はひいていた。
どうやらひとまずピンチの波はざざっとひいてくれたようで、俺はほっと胸をなで下ろした。
「それと、ソラが先ほど掲示板のところにいたのが見えました」
と、イフが、言った。
「ああ、いたよ。見てたのか?」
「はい。私たちのパーティーは今日取りかかるクエストはもうすでに決めてあるから掲示板の人ごみにまぎれる必要はない。何事も用意が大切だ……みたいな顔で、優越感に浸っているような顔をしていました。一人でにやけるのは、あまりよくないですよ」
何ということだろう、俺の思考がほぼ完璧に看破されているではないか。





