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俺の目の前には、三階建ての建物があった。
(着いたか)
と、俺は、何とはなしにそう思った。
冒険者ギルド、ヴィセント支部である。
建物の中に入るのは、昨日に引き続き、これで二度目となる。
冒険者ギルドの中は、簡素な市役所のようだ。
建物の入り口から真っすぐに歩いていくと、真正面に受付がある。
受付では、五人ほどが書類に向かっていて、もう五人ほどが受付の窓口対応をしている。
建物の広さのわりに事務系の仕事に従事している者が少ないのは、建物内に酒場が併設されているからで、酒場が結構な広さを占めている。
酒場は、冒険者たちの交流と情報の収集と交換の役割を担っているのだ。
酒の匂いがじんわりと漂っていた。
朝っぱらから酒を飲んでいる者がいるらしく、酒場の一角で五・六人程のグループが盛り上がっていた。
(ラテュレは、いるかな?)
と、俺は、思った。
酒場のカウンターに自然と目をやったが、黒髪のツインテールの少女は、来ていないようだった。
大賢者グローシスの一番弟子ラテュレ・メソッドである。
定期視察でこのヴィセントの街に来ていたと言っていたから、もしかするともうこの街にはいないのかもしれなかった。
ギルドの建物の中には、掲示板が設置されていて、募集中のクエストが掲示されている。
掲示板の前に来ると、昨日と同じように所狭しと張り紙があった。
数人で固まって相談しているグループもあった。





