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さすがに連呼しすぎである。
「イ・キ・り! イ・キ・り!」
「……こ、こらっ。やめなさい」
女の子は、母親の制止などどこ吹く風てわ、さらにニコニコしながら言っている。
イキりの「イ」「キ」「り」それぞれの文字に点を挟み込むような、テンポのよさである。
「……」
そんな女の子のノリに押される感じで、俺も黙っていた。
学校の文化祭後の打ち上げの時のオレンジジュースの一気飲みの時のコールにも似た様相を呈してきていた。
「I・KI・RI! I・KI・RI! YA!」
いつまにかアルファベットのような発音も飛び出していた。
女の子の所作はラッパーのごときであり、もはや意味不明である。
ほんわりほんわかムードという雰囲気は、女の子が自ら破壊していくスタイルだったようである。
「ドゥー、ユー、I・KI・RI? オーケー?」
女の子からの問いかけである。
(……っ。ままよ!)
ボールを投げられた以上、俺もだんまりというわけにもいかなくなった。
「ノンノン! ノット、I・KI・RI! ドゥー、ユー、アンダースタンドゥ?」
俺は、リズムを取りながら、返した。
「ホワット? ノット、I・KI・RI? クレイジー、アンビリーバブルゥ!」
女の子は、DJすなはちディスクジョッキーのごときリズム感で、言った。





