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イキっているは態様すなわち有様や様子を表す言葉で、イキるがその原型である。
イキるとは、意気がるの略だ。
昨今では、ネットスラングにもなっている。
意気がると同様に、虚勢をははったり調子にのったり偉ぶったりすることをいう。
調子づいている者に対して、「イキっているな」と半ば揶揄する形で用いられることが少なくない。
明らかに力の差がある相手に挑もうとする者に対して、「イキるんじゃない」となだめる形で用いられることも多い。
いずれにしても、イキるという言葉がプラスイメージの言葉なのかマイナスイメージの言葉なのか否やと問われれば、後者に当てはまる類のものだろう。
「……ほら、行きますよ」
母親は、女の子の手を半ば強引に引いた。
親子とすれ違うのは、ほんの数秒の出来事である。
しかし、その数秒間はなかなかに濃い内容だった。
俺は、嘆息した。
(……まあいいさ)
と、俺は、思った。
女の子の言葉に悪意のかけらもないことはわかっている。
イキるという言葉を使いたくなっただけかもしれない。
もしかすると、イキるという言葉の意味を勘違いしていて、いいニュアンスの言葉として使っているのかもしれない。
「イキり! イキり!」
と、女の子は、ニコニコしながら言っている。
「……」





